皮膚に傷ができると時間とともに皮膚がくっつき始め、皮膚表面は約24時間、皮膚の深いところは3~4日ほどの時間をかけて徐々に修復が進み、約1週間で傷口がしっかりとふさがった状態となります。正常な傷であれば、その後時間とともに傷口の赤みが引き、通常の皮膚と同じような状態にもどります。
ケロイドや肥厚性瘢痕は、この治療過程が長引き、傷口の炎症が長く続いた結果、通常よりも多く、炎症細胞、血管、繊維組織が増殖し、腫瘍化してしまう疾患です。とくにケロイドの場合は、元の傷の範囲を超えて患部が広がっていくため、自然治癒を望みにくく、整容面のほか、痛みや痒みを生じるため、適切な治療を続けることが重要となります。
【ケロイド】
【肥厚性瘢痕】
ケロイドと肥厚性瘢痕は見た目がよくにているため、はっきりと区別することはが難しく、治療方法もほぼ同じとなります。ただし、ケロイドと肥厚性瘢痕では以下の性質の違いがあります。
【ケロイド】
傷を越えて広がり、痛みやかゆみを伴うことが多いです。自然治癒は臨みにくい疾患です。また、難治性で再発することが多く不治の病とされてきましたが、近年では、手術などを組み合わせ、完治を目指せるようになってきました。
治療開始が早ければ早いほどよく、症状を軽減させることが可能です。
また、ケロイドは体質によるものが多く、ご家族で同じような症状の方がいらっしゃる場合が多いのも特徴です。
【肥厚性瘢痕】
傷を越えて病変が広がることはなく、時間の経過とともに赤みが引き、徐々に皮膚の盛り上がりも解消し、適切な治療を行なうことで治すことができる疾患です。
抗炎症剤であるステロイドが塗布されたステロイドテープを3ヵ月間を目安に継続貼付します。患部の固さがとれ、腫れが軽減しましたら、貼付時間などを調整し徐々に保湿剤などの外用剤に移行します。ステロイドテープの効果が薄い場合は、注射など他の治療方法を併用しながら治療を進めます。
内服薬トラニラストが保険適応があり処方されている肥厚性瘢痕、ケロイドに対する治療薬です。
抗アレルギー薬でもあり、各種炎症細胞の活動を抑制することで、痛みや痒みを緩和し、病変を沈静化させる作用があります。また、漢方薬として柴苓湯(さいれいとう)を処方する場合もあります。
ステロイド軟膏やクリームや、非ステロイド系抗炎症剤、ヘパリン類似物質の軟膏・クリーム・ローションなどの保湿剤 を使って治療を行ないます。
シリコンジェルシートを用いて患部を圧迫することで、保湿や患部の安静・固定の他ケロイドへの血流を低下させ、皮膚 線維細胞の増殖を抑える効果が期待できます。素材が柔らかくクッション性もあるため、痛みの軽減にも利用できます。
ステロイドをケロイドの中へ注射する治療です。塗り薬などに比べて患部に直接注射するため効果が高く、劇的に赤みや
腫れは軽減します。ただし、ステロイドの影響で周囲皮膚に凹みが生じる場合があります。
また、固い瘢痕に注射をするため痛みが強い場合があります。状況により、麻酔と組み合わせて施術をいたします。
ケロイドや肥厚性瘢痕内の血管やコラーゲンを破壊・分解を促進しすることを目的としてレーザー治療を行なっています。 レーザー治療は保険適応外となりますので、自費での治療方法となります。
手術は、直接病変を切り取って治療する方法となります。ただし、通常の手術方法では再発する確率が高いため、 ケロイドが再発しにくい傷口の縫合のほか、再発予防のため治療を術後も行なう必要があります。術後、再発をした場 合は手術前よりも患部が大きくなるため、手術の後も予防のために内服や外用治療をしっかり行うことが重要です。
ケロイドや肥厚性瘢痕は、できた部位や状態によって、最適な治療法が異なります。
以下のような症例の場合、手術が第一選択になる場合が多くなります。
術後の再発を抑えるため、ケロイド・肥厚性瘢痕の施術では様々な工夫と、再発予防治療を行ないます。
● 縫合方法
ケロイドや肥厚性瘢痕を摘出した後に、傷を縫合しなければなりませんが、最も大切なのは再発しないように縫うこ
とです。ケロイドは真皮から生じるため、真皮に過剰な力が加わらないよう真皮より深くにある筋膜などの組織をし
っかり縫い寄せて傷口を十分盛り上げ、ひきつれなどが生じることなく治癒するよう縫い合わせます。
● 放射線照射
手術後には基本的に、再発率を低下させるために、ケロイド術後に放射線照射を行います。ただし、若年者や、女性の
乳房など手術部位によっては照射を行なわない場合もあります。
● 手術後の療法
手術後過ごし方は再発に大きく影響します。術後暫くは患部のテープ固定と保存的治療を併用して経過観察を続けます。
また、術後数か月の間は激しい運動や仕事を避けてお過ごし下さい。